『健康』でつくる省エネ住宅
住む人が何処に重点を置いて予算配分するのか。
デザイン・内装・設備にかけるか、断熱・気密・換気にかけるか、伝統工法にこだわるか。
・建てる地域や近所の様子によっても違うかもしれません。
夏でも朝晩は心地よい風が吹き、冬も温暖な住みやすい地域かもしれません。
・我が家のように、南方向に化学工場があって、夏は南風に乗って匂いが辺り一帯に朝から晩まで漂う地域もあるでしょう。
建てる家は住む人が決めます。工務店の提案や考え方が、建てる人の考えと合えばいいですね。
そんなことを思い浮かべながら、たまたま書店で
”健康”と ”省エネ”というキーワードで目を引いた専門雑誌を開いてみました。
「建築技術」2011年1月号 『健康』でつくる省エネ住宅 です。
101~189ページまでの特集です。
見出しと、気になった部分を書き出して見ました。
1.『健康』でつくる省エネ住宅
1.1.省エネ住宅の変遷と今後の行方(南雄三)
北海道ではドラム缶の単位で全室暖房していたので、高断熱・高気密化で省エネ効果は明白だった。
本州以西では個別暖房の家ばかりで、無駄にエネルギーを使っていないため、断熱化しても省エネ効果は出てこない。
「暖かい」と快適性を訴えても「そんな贅沢は要らない」となる。
そこで、最後の砦が「健康」だったのだ。
1.2.健康住宅のこれまでと今後の展望(南雄三)
1.3.エコハウスは健康が先導して進めるもの(南雄三)
・大震災よりはるかに多くの人が入浴中になくなっている。
阪神・淡路大震災:6500人近く
入浴中:14000人/年
(入浴中の大半はヒートショックによる物と推定)
・建物と健康のかかわりを科学を知った建主が自分自身で判断するのに任せることが本物。
・やはり寒い家は嫌だという建主が多くなれば、伝統建築や寒い建築は変わらざるを得ない。(しかし)省エネを義務づければ、美しい数寄屋造りや伝統の技を継承する建築は一挙に消滅してしまう。寒いと健康にどんな影響があるかを理解しながらもなお数寄屋造りや伝統建築で家をつくりたいというのなら、それは個人の自由である。してはいけないのは、業者が個人の都合で自分の主張を押しつけることである。
・10℃以下にしない。
国民に「建物と健康の科学的なかかわり」を認識させる行動を取る一方で、業者には次の提案をしたい。高断熱・高気密で頑張っている者にではなく、その領域に踏み込めない者たちに対してである。それは、『家の中に10℃以下の部屋をつくらない』ことを、業者の責任において実行することである。
非暖房室が10℃以下になると結露が起こり、朝までに寝室も含めて、廊下、便所などが10℃以下になるとヒートショックの危険が生じる。
全室暖房とか高断熱・高気密とかいえば重苦しいが、家の中に10℃以下の部屋をつくらないと言えば、少しは気になるだろう。でも簡単にこのレベルはつくれない。
・そして貸家では健康評価により劣悪だと評価されれば家主に改善命令を出す所まで、健康住宅を発展させていきたいものである。
・人はまず安全を求め、安全が確保されれば健康を求め、健康だからこそ快適を求めたいと思う。安全と健康をまず確保すること、住宅設計の基本は、安全と健康にある。健康を維持増進するためにエネルギーが多く使用されることになったら、知恵を持って省エネを図る。順番は、「健康が先で省エネが後」。ついでに、「断熱が先で創エネは後」も付け加えておこう。
2.対談1
2.1.「健康」と「快適」の正しい議論をしよう(田辺新一・南雄三)
・今でも「お年寄りが寒くないと言っているから、昔のままでいいんだ」、と言う建築家がいます。しかし高齢者になると暑さ寒さを感じにくくなるのです。知らず知らずのうちに、熱中症や低体温症になることが問題なのです。
・加齢によりそれがだんだん減退していきます。その減衰カーブをなるべく下げないのが、(健康)「増進」です。減衰カーブを緩やかに下げる、と言っても良いかもしれません。PPK(ピンピンコロリ)が理想といわれますが、無くなる前の日まで元気でいたい。・・・その中で住宅は意外と大きな役割を果たしているのではないか、と言うことです。
・住んでいる人に「自分の家がどんな状態か」を気づいてもらうことが大切です。住宅が健康に与える大切さを説明したい。自分の家は本当に寒いのか、すべりやすいのか、転落しやすいのかなど、日常生活のなかで他と比較できないもので比較してみることがチェックリストの考え方です。また、居住者に、「自分の家は平均値に対してどのくらいか」を認識してもらい、もしそういうことがあったら、「こういう改修」とか「こういう建て方をすればいい」というメニューを用意することです。
・もう一つは、住宅のプロを対象に「これは基本ですよ」「これは推奨しますよ」「選択できるもので、あなたがもし好きなら、増進するために選んでもいいよ」という、ガイドラインをきちんと示すことだと思います。最終的には、国民が住宅にきちんと投資して欲しいと思っています。
3.日本における健康住宅の取り組み
3.1.「健康維持増進住宅研究委員会」の取組み(坊垣和明)
3.2.シックハウス法とその成果(林基哉)
3.3.CASBEE戸建-健康チェックリスト(清家剛)
・「CASBEE-健康」既存住宅において居住者自らがチェックするための簡易な診断ツールであり、居住者本人に住宅の問題点に気づかせ、その問題点の改善、さらには専門家によるチェックを受けた上で改修へとつながる事を期待するものである。このツールはあくまで自己診断であるため、専門家を介さない。
4.健康・快適を科学する
4.1.温熱と快適(田辺新一)
・温熱環境分野で用いられている協議の熱的快適性とは、一般にネガティブな状態で熱的不快を感じない状態を言う。これに対して、積極的な「快適感」も存在する。自然界の時変動に伴う快適性を、人工環境の中に取り込むのは長年の夢である。しかし、変動を伴う刺激は繰り返して居住者に快適感をもたらすわけではない。最初は気持ち良くても、しばらくすると不快になる。長い時間を過ごす住宅では、暑くも寒くもなく不快がない状態をできるだけエネルギーを使用せずに維持する、という考えが大切になる。
・局部温冷感による不快の主要因は、不均一放射、ドラフト、上下温度分布、床温度の4つである。
4.2.断熱と健康(岩前篤)
・暑さ寒さはむしろ精神的な克服対象に位置づけられ、快適性を求める高断熱化は”贅沢なもの”、といったイメージもないわけではない。
・欧米では、断熱は、コストはかかるが良い物である、という確固たる共通認識があるように思うが、この国では断熱がよくない、いわゆる「断熱悪論」と随所で出会う。断熱材を用い、内外の環境の差を拡大することは、建物にとっても、人間にとってもよくない、という考え方であるが、これもこの国の特徴の一つと言ってよい。
・WEBで2万人調査
寝室の窓仕様からその家の断熱グレードを推定。(アルミでガラス1,2枚=各3,4のグレード、樹脂でガラス2,3枚=各5,6のグレード、木でガラス2枚以上=6のグレード)というグレード順。
(戸建てor集合住宅から)転居後の断熱グレードとせき・気管支喘息などの改善率をグラフに示している。
4.3.空気と健康(田島昌樹)
・この例では、大人は1日に1Kgの食事を摂り、3Kgの水を飲み、30Kgの空気を吸っており、しかも1日に実に90%の時間を室内で過ごすかとから、私たちが、いかに室内空気に対して注意を払う必要があるかが示唆されている。
4.4.健康を増進する浴室(大塚雅之)
4.5.健康を増進する寝室(都築和代)
4.6.健康を増進する街(白石靖幸)
5.健康住宅の実践
5.1.健康住宅の設計(小泉雅生)
5.2.シックハウス対応住宅(濱田ゆかり)
5.3.電磁波過敏症対応住宅(江藤眞理子)
5.4.ケミレスタウンプロジェクト(花里真道)
5.5.自立循環型住宅「省エネルギー改修版」に見る健康改善(早津隆史)
5.6.住宅医ネットワーク(三澤文子)
5.7.バウビオロギー(石川恒夫)
6.海外における健康住宅の取り組み
6.1.英国のBuildingPathology
6.2.欧州の健康住宅評価制度
6.3.北米での建物のダンプネスへの対応
7.対談2
7.1.『健康』で住宅の話をしよう(星旦二・南雄三)
・NNKとPPKはどこが違うかは、要介護か元気かの違いです。高齢者の方は「ねんねんコロリ」はよくご存じです。
・医療費に35兆円かけるならば、すぐれた住宅に20兆円かけて欲しいと思います。
・「家の設計で一番重要なのは健康だ」という言い方をしたらいけないんですかね。例えば、今度CASBEE健康チェックリストができて、それが始まる。既存の家を評価するときや調査するときに、健康の目で見ることは非常に重要なことだと思います。
・CASBEEのチェックリストもそうですが、健康にとってより望ましい大事なベースになる部分と、推奨の部分に分けています。ベースの部分は法規制で一定程度「少なくともこれ以下の住宅は貸し出してしてはいけません」という考え方は、ぜひ取り入れて欲しいですね。
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